なぜ「仮想通貨」と言うの?電子マネーとどう違う?
もともとの呼び名は暗号通貨
日本国内での呼び名は『仮想通貨』が定着していますし、昨年改正された資金決済法における表現としても『仮想通貨』という表現がされています。ですが、正確には『暗号通貨:Crypto Currency(クリプトカレンシー)』です。
仮想通貨を英訳すると『Virtual Currency(バーチャルカレンシー)』となりますが、ビットコイン等をそのように表現しても、海外では『Crypto Currency(クリプトカレンシー)』の方の呼び名で定着しているので通じない可能性が高いです。
ただ、日本国内では『仮想通貨』で全く問題ないと思います。
なぜ暗号通貨と言うのか?
実際にその通貨の実物として存在しないので『仮想通貨』の方がしっくりくるのではないかと思いますが、それなのになぜ『暗号通貨』 が正確な呼び名なのか、それは暗号技術を採用した通貨だからです。
Wikipediaで『暗号通貨』を調べてみると、
暗号通貨(あんごうつうか、英: cryptocurrency, crypto currency)とは、暗号理論を用いて取引の安全性の確保、およびその新たな発行の統制をする仮想通貨である。ビットコインがその先駆けであると同時に、代表例である。
と説明されています。この説明文からも分かるように『仮想通貨』という括りの中に、暗号通貨というものが位置付けられているというのが分かると思います。
上記したWikipediaからの引用文中にある『暗号理論を用いて』という部分ですが、なぜ暗号理論を使ってあるのかというと、仮想通貨はその取引内容の記録、つまり、誰が誰にいくら仮想通貨を送金したとか、誰が誰からいくらお金を受け取ったとか、その結果各自いくら保有している等の情報がネット上で公開されており、誰でも見ることができる仕組みになっているからです。
ただ、その内容が包み隠さず公開されている状態では、記録の改ざんや不正送金等が行われてしまうリスクがある為、暗号理論というものを採用しているのです。
ちなみに『そうはいいながらコインチェックは580億円分ものネムを見事に不正送金されたじゃないか』という人は、まだまだ仮想通貨に関する知識が十分ではないです。コインチェックがハッキングにより保有していたネムを別口座に不正送金されてしまったのは、暗号通貨を取り扱う上で定められているセキュリティ上のルールを十分に守らずに保管していたからです。
ネム財団の会長であるロン・ウォン(Lon Wong)氏も、
コインチェックがNEM(XEM)を盗まれたのは、NEMのマルチシグコントラクトを採用していなかった為です。今回の件はNEMの脆弱性によって起きたものではない為、ハードフォークは行いません。
とコメントしています。『マルチシグコントラクト』の説明すると本題からずれていくのが簡潔に書きますが、一言で言うと、仮想通貨におけるセキュリティを高める為の仕組みのことです。『マルチシグコントラクト』は、
- マルチ(複数の)
- シグネイチャ(署名を必要とする)
- コントラクト(契約)
という意味で、上記の『契約』はコインチェック事件に当てはめると『送金』と置き換えた方が分かりやすいと思います。つまり、マルチシグコントラクトとは、仮想通貨を出金する際に複数の人が『この出金は正当なものだから出金して問題ないよ』とサインしないと成立しないってことです。
そういった仕組みが仮想通貨には備えられており、ビットフライヤー(bitFlyer)はこのマルチシグコントラクト対応を謳っていますが、コインチェックはネムについて対応できていなかった上、更にハッカーがアクセスできるインターネット上のウォレット(仮想通貨を管理する財布)で管理をしていたという非常にセキュリティに関して甘い管理をしていたことが原因です。
…と話が本題から逸れましたが、もう少し暗号理論を採用しているという部分についてあと少しだけ書き添えます。
『じゃあ暗号理論を用いるって一体何?』という部分なのですが、このことを理解する為には『ハッシュ(ハッシュ値)』とか『ハッシュ関数』というものを軽く理解しておくと良いと思います。
ハッシュ(ハッシュ値)とは
ハッシュ(ハッシュ値)とは、あるデータをある計算式に当てはめることにより生成される固定長のデータのことです。例えば、
『AさんがBさんに1BTCを送金しました』
というデータをある計算式に当てはめて出力させてみると
『c5a1528fg43cac12a5fv16ae91q010e』
というようなデータが生成されます(あくまで例なのでデタラメな文字列です)。この意味不明なデータをハッシュ値または、単にハッシュと言います。このある計算式で導かれたハッシュ値は元のデータに戻すことはほぼ不可能という特徴を持ったデータです。
このハッシュ値を生み出す計算式のことをハッシュ関数と言い、このハッシュ関数は1種類ではなく何種類もあり、ビットコインでは『SHA-256』 と『RIPEMD-160』というハッシュ関数が採用されています。
このハッシュ値とハッシュ関数が仮想通貨にどう関わっているかと言うと、上記したような『AさんがBさんに1BTCを送金しました』という取引が実際に行われたという事実に対して生成されたハッシュ値をハッシュ関数を使って本当にそれが正しいですよということを証明することに使われているのです。
仮想通貨のことを少し調べたことがある人ならば聞いたり、見たりしたことがあると思いますが、この証明をすることを『マイニング』と言い、それを証明する作業を行う人を『マイナー』と言います。
仮想通貨と電子マネーは違う?
これについては、ビットフライヤー(bitFlyer)のサイト上で実に分かりやすく説明されていますので引用させて頂きます。
現在一般的に利用されている電子マネーは、基本的にはその地域で使われている通貨を使って電子的に決済を行うために存在しています。
日本国内の例であれば、円での支払いをより便利にするために、円の紙幣や硬貨の代わりとして電子マネーが活躍します。そのため、利用者は所有する円を電子マネーの端末に入金したり、あるいは電子マネーでの支払いの際に利用される銀行口座にお金を入れておくことになります。
紙幣や硬貨を利用せず、電子的に決済を実現していますが、実態としては円という通貨をやりとりしていることには変わりありません。
ビットコインは、何らかの端末に円をチャージするというものではありません。
つまり、電子マネーの場合、関東であればSuika、中部であればToika、関西であればIkoka等、日本の法定通貨である『円』をカードにチャージすることによって、硬貨や紙幣の代わりに電子化された形での決済を成立させることができるようにするものであって、あくまで日本であれば法定通貨の『円』をベースとして、その利便性を高めたものということになります。
また、Suika、Toika、Ikoka等の電子マネーは、そのものを世界各国で通貨として売買をすることはできませんし、それらを別の通貨に交換することもできませんし、使用できる場所はあくまで日本国内、場合によっては日本国内でもある地域に限定されますし、またカードにチャージした通貨の価値は、どれだけ時間が経過しようとも10円は10円としての価値を保たれます。また、Suika、Toika、Ikoka等には管理者もいます。
対して仮想通貨は、電子マネーとは真逆の性質を持った物であると言えます。世界各国で売買ができる市場があり、そこで別の通貨に交換も当然できます。また、電子マネーの場合、カードにチャージされたお金は100年経とうが10円は10円の価値でしかないですが、仮想通貨の場合はレートが変動するので、10円分の仮想通貨は100年後に1億円になっている可能性もあります。
実際に2017年の1月時点では1BTCが10万円くらいでしたが、2017年12月には1BTCは200万円くらいになりました。しかし、この記事を書いている2018年2月初旬の時点では1BTCは70万円台まで下落しています。